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あたしがするはずだった諜報は、カイが責任をもって勤めると引き受けてくれた。
外に出ると、みんなが待っていた。
統領がサナに伝え、サナがみんなを集めてくれたようだ。
詳しい事情は聞かされていないようだが、もう二度と会えないということは、伝わっているようだ。
みんな、泣いていた。
セイも、気まずそうにだけど、涙を流してくれていた。
マナトが口を切った。泣きながら、納得できないという顔をしていた。
「こんなのって、ねえよ。俺、みんなでバーグで会えるの、楽しみにしてたのに。俺、悔しくてたまんねえよ」
「ありがと、マナト。でも仕方ないんだ。最後にあんたみたいな人間に会えて、よかったよ。フィルのこと、あたしの分も、頼んだよ」
マナトは仕方なく、頷いた。
セイが目をそらしながら、やはり泣きながら、言った。
「お前からはいろんなことを学んだ。残念だが、達者に暮らせ」
「ありがと、セイ。あたしも弟ができたみたいで楽しかったよ。あんたも元気でね」
フィルは大粒の涙をこぼしながら、消え入りそうな声で、言った。
「キア、私の一番の理解者は、あなたです」
視界が一気に滲んで、零れてく。
「ありがとう、フィル。あんたみたいな、友達ができて、嬉しかった。きっと、いい人見つけて、幸せになってね」
あたしはマナトから車のキーを受け取り、涙を拭い、みんなに手を振ってイスパーハン家を後にした。
最後の最後に、こんな時間を過ごせるとは思ってもみなかった。
絶対にみんなのこと、忘れない。
今なら言える。この世界も、あながち、捨てたものではない、と。
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