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謁見の間の戸を少し開けると、カイはいた。
統領もいる。入っていいのかな。
「入りなさい、レティア」
あたしは中に入ったが、なんだか空気が重い。
カイは下を向いたまま、振り向かない。様子がおかしい。どうしたんだろう。
「レティア、私の名を言ってみなさい」
「え? ナギ、さん?」
「カイ、私の名は?」
「……僕は母上と統領としか知りません」
え?
「レティア、狂った人間の心の声を、聞いたことがあるわね?」
アレニアのこと? あれは、そんな気がしただけだよ。
「カイ、お前は自我を失った人間の心が読める?」
「……試みたことはありますが、読めませんでした」
……。
「カレノアのことを、見抜いていたのね」
……え?
「今から私が言おうとしていることを、当ててみなさい」
……。何でだろう。わかる。
「あたしを、追い出す?」
「理由は?」
「……アルティ、シモ? 誰、それ」
カイは振り向いてあたしを見た。信じられないという顔をしていた。
統領は冷ややかな目で、あたしを見据えながら言った。
「アルティシモ・イスパーハン。この家の血族だった女よ。そして、お前の祖先よ」
……。あたしがイスパーハンの血族の子孫?
「先に確かめましょう。お前、腹部に違和感があるのでしょう。診てあげるわ。来なさい」
統領は奥の間とは違う入り口に立った。カイはまた正面を向いて、うなだれていた。
行くしかないみたいだ。
あたしは、うなだれたカイを目で追いながら、奥の間に入った。
病院の検査室のような場所で、統領はあたしの体を丹念に調べた。尿も採って何かを調べていた。
しばらくして、結果が出たようだけど、あたしにそれを知らせないまま、表に出た。
統領は椅子に戻り、あたしはカイの隣に座った。
統領は、苦しそうだ。そんなに結果は重いのか?
彼女は目を伏せて、口を開いた。
「レティアは、妊娠しているわ」
聞き間違いだと思った。だから聞き返した。
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