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「ごめん、何て言った?」
「お前は妊娠していると言ったのよ」
「あたし卵巣、持ってないよ。知ってるでしょ?」
「再生したのよ。五、六年をかけて」
切り取った卵巣が再生? そんなの、人間の体じゃ……。
「普通ならありえないわよ。でもお前は、普通じゃないのよ。肉体的にも、精神的にも。イスパーハンの血族に突然変異で生まれた、アルティシモの子孫ということは、そういうことなのよ」
「カレノアさんの、裏切りって?」
「私はカレノアに、お前の身辺調査をさせたのよ。もしかしてと思って。その間に、封じられていたアルティシモの血族に関する記録を開封して、私は読んでいたわ。片目から右腕、内臓に至るまで、再生したのを確認したという資料が出てきた。カレノアの調査から、お前は血族が隠れ住んだ島からさらわれた、唯一の生き残りであったことがわかった。カレノアはその資料と、アルティシモに関する記録を、持ち出して逃げたのよ。裏の組織にね」
……。嘘だとは、思えない。
「始めはお前の体を使って、組織に忠実な集団を作ろうとしたのよ。凄まじい生命力に回復力、他の血族が読めない部分まで心を読み聞き、それに耐えられるタフな精神。さぞ強力な部隊が出来上がるでしょうね。でも、末端の構成員が誤ってお前の卵巣を摘出してしまった。組織の計画は失敗に終わったわ。子も産めなくなったお前を、組織は追わなかった。でも、もう、始めからその在り処を探るために送り込まれていたカレノアによって、アルティシモの体は内臓まで再生するという事実を、組織に知られてしまった」
「かつてのアルティシモがそうだったように、あたしとあたしの中の子供は、また狙われる。ここにいたら、巻き込まれてイスパーハンの血族自体が絶えてしまう恐れがあると、言うんだね」
あたしが先読みしたら、統領の顔が後悔で一層歪んだのがわかった。
「……お前のカレノアに関する疑念を、もっと早くに追及すればよかったわ」
でももう、遅いのよ。許して頂戴。
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