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「いいんだ」
だって今度は死別するのではないのだから。ここで得た幸せをもったまま、生きられる。
「いいわけがないだろう」
カイがやっと口を開いた。聞いたことのない、怒りと、落胆のこもった声。
「出て行くのか」
「うん。朝のうちに発つよ」
「そんなに簡単に、割り切れることなのか?」
統領は割って入った。彼女なりの精一杯の気遣いだとわかった。
「それ以上は外でやりなさい。キア、島の地図を渡しておくわ。星空を見たかったのでしょう」
あたしはカイを置いて統領の傍に寄った。地図を受けとって、あたしは言った。
「世話になったね。ちょっとお母さんといるみたいな気がして、楽しかったよ。ありがとう、ナギさん」
彼女は、ふん、と鼻を鳴らすだけだった。
でもちゃんと伝わった。私も娘ができたようで、嬉しかったわ、本当にごめんなさい、と。
カイが立ち上がってあたしの腕を掴み、強引に外に連れ出した。
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