サウスホークの街 自己紹介を含めて

3/12

15人が本棚に入れています
本棚に追加
/169ページ
 さっき、町行く人の波に紛れても、って例えをしたけど、それは小説を読んで知ったことで、あたしが住んでいるとこに、人の波なんかない。  まっとうな町なんかでもない。  スラム……肉の腐った匂いのする、死体がころがってても誰も気にしないようなところだ。  あたしも始めは、人間が死ぬってことが、恐ろしかった。殺すってことも、自分が壊れそうになるくらい気持ちが悪かった。  でも、哀しいかな、人間って、慣れるんだよな。  そりゃあ、可哀想に、とは思う。けどそこまでなんだ。それ以上感情移入が出来ない。  だって、知らない人だから。逆に、羨ましいとすら思うときがある。痛いのは怖いよ。苦しいのも嫌だよ。  そして何より怖いのが、友達を残して逝くこと。友達があたしを残して逝ってしまうこと。一緒に逃げてきた友達がいなけりゃ、あたしはすでに人間ではなくなってた。    いや今も、そうかもしれないけど。  そういう諸々の恐怖を超えて、あっちに逝っちゃった人を、羨むときもあるね。
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加