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そしてこの場所の一番気に入らないところは、星空が見えないこと。
すぐ隣の大都市サウスホークでは、一晩中娯楽施設が明々と人工的なネオン・ライトを光らせているおかげで、こっちでも、夜になっても星が見えない。
何で星にこだわるかって? あたしを苦しませない記憶が、一個だけあるんだ。
どこまでも広がる紺色の大空に、大小様々な星が輝いてる風景。
そのとき、お母さんに抱かれてた感触まで、残ってる。
何でそんなことだけ覚えているのかわからないけど、この記憶だけが、あたしを安らかな気持ちにさせる。人間でいたいと思わせる。
死んだら星になりたいな。
メーナスは、よくそんな夢見れるな、って、呆れた顔するけど、いいじゃん。死んだ後のことくらい、好きに考えたっていいじゃん。
現実は何一つ、うまくいかないのだから。
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