サウスホークの街 自己紹介を含めて

5/12
前へ
/169ページ
次へ
「キア、盗ってきたぜ。本もあったぜ」 「なあに、また、考え事してるの?」  サウスホークに食料を盗りに行っていたメーナスとビビが帰ってきた。  読書好きのあたしのために本も盗ってきてくれた。  二人も組織が付けた名前じゃなく、自分でそれぞれ付けた名を使っている。  二人がいたからやっていけてる。あたしは読んでいた本を閉じた。 「サンキュー。大丈夫でよかったよ」 「実は結構、やばかった。もうあそこからは盗れねえな」 「困ったね。もうほとんど行けるとこないわよ」  最近市長が変わって、サウスホークはスラムに対する取り締まりを厳しくしていた。  二人が盗ってきた食料は、もって三日分。盗れないとなると、現金で買うしかなくなる。  現金を得るには、詐欺をやるか、スリをやるか、恐喝するか、殺して奪うか、男に体を売るしかない。  詐欺もスリも恐喝もとりわけ殺しも、顔がわれる可能性が高いし、見回りと防犯グッズの充実で、やりにくくなっている。  となると、体を売るしかなくなる。  サウスホークは、スラムの住人を考慮して、売春には甘いのだ。それで収入源を確保させていると言う、反吐が出る町だ。
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加