15人が本棚に入れています
本棚に追加
「あたしが稼いでくるよ」
メーナスが思い切り顔をしかめた。
「冗談やめろよ、レティア。他に方法あるだろ」
「どんな?」
ビビが少し考えて言ってみた。
「闇ギルドに入るのは?」
あたしは首を横に振った。情報収集はあたしの得意技だ。
「ここのギルドはだめだよ。組織にいた頃と変わんなくなる。使い捨てにされる」
メーナスが顎に手をあてて考えた。
「いっそ、ここから他の町に行くってのは?」
あたしもそれは考えた。でもどっちにしろ、現金はいるのだ。三日分の食料だけじゃ、船にも乗れないし、歩いて一番近いホブの町までとてもじゃないが、もたない。
ビビが思いついたように言った。
「じゃあ、車盗っちゃおうよ! キーがなくてもエンジン回せるし」
それも考えた。でも車は高級品で、盗るのが難しいうえに、成功したとしてもすぐに足がつく。遅くても半日、下手をしたらガードシステムが作動して、一時間もせずに高速隊に追跡される。それを振り切ることはまず出来ない。この町で車を狙うのは危険過ぎる。
メーナスがまた思いついた。
「証明書偽造は? レティア、パス造ったじゃないか」
確かにあたしは組織にいた頃に仕込まれた技術で、唯一検査に引っかからない偽造パスポート造りに成功した。パスポートは船に乗るときに必要なものだ。メーナスとビビの分も造ってある。
でも出生証明書はわけが違う。持っているかいないかで、犯罪者かどうか見分けるためのようなものだ。最先端の技術が駆使されてて、あたしの腕じゃ出来ない。もしばれて捕まったら即刑務所だ。しかも極刑だ。胸くそ悪くなる話だが、あたしたちがいた組織は警察の上層部とまで通じているのだ。この世界は奴らのものだと言っても過言ではない。
信頼出来る人間は、友達だけだ。その人たちを守るためなら、何だってやってやる。
最初のコメントを投稿しよう!