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数日後、東雲は相変わらず俺の家に入り浸っていた。
つまり、結果から言えば、東雲は俺を嫌うことなく、俺はそんな東雲を受け入れた事になった。
ーーあの後も、容赦なく東雲の喉奥で自分の欲求を満たした。
それ以上の行為はしてない。
それ以上の関係にも、なっていなかった。
ヤってしまうのもありだったんだけど、東雲にとっては初めてのことばかり。体力を大きく消耗したようだったので、そこは労わってあげた。
あの日から、東雲はマスクをつけている。
風邪をひいたわけではない。
俺の所為で、喉がつぶれてしまったのだ。
しゃがれた声は、女子たちにもぎゃーぎゃーと心配されていた。
本当の事なんか言えるわけもなく「かぜ、ひいちゃった」なんてアイドルスマイルでしれっとかましていた。
日中はそんな感じで、喉を労わる余裕もなく、今、やっと俺の家に来て落ち着いたところだった。
「自分でやっておいて言うのも変だけどさ。大丈夫か?」
はちみつとレモン汁で作った即席ドリンクを東雲に渡しながらそう言う。
加害者本人のセリフではないと自分でも思う。
「ありがと。だいじょうぶ。いただくね」
東雲はカップを受け取ると、マスクを顎下にずらしてゆっくりとそれを飲んでいた。
俺がドリンクを作っている間、東雲は雑誌を読んでいたようで、無造作に床に置かれていた。俺は雑誌を拾い上げ、東雲の瞳がそれを追う。
開かれたページには、今、話題沸騰中の大人気男性アイドルグループの特集が掲載されていた。
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