いち

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いち

「僕、卓麻くんのこと、好きだよ」  顔を赤く染めながら、ニコッと微笑みが向けられた。  サイダーのごとく爽やかな彼は、東雲(しののめ)弥太郎(やたろう)。俺の友人である。  同じ大学のゼミに所属したことで知り合い、話している内に仲良くなって、最近はよく俺の家に入り浸る事が増えた。  今日も、俺の家で課題のレジュメを作成する為、小さな折り畳み式のテーブルに、ぎゅうぎゅうになって資料を広げている。  そんな時、突然、東雲はそう呟いたのだった。  数秒の間が空き、俺の握っていたシャーペンが、スルリと手を抜けて、音を立てて落ちた。 「は? なに?」  あまりに驚きすぎて、つっけんどんな返事をしてしまった。  東雲は、ひとことで言えばイケメンの部類に入る。小顔でふわっふわの色素の薄い髪、瞳の色も同じ色。なのに名前は純日本人。このギャップったらない。  大学内を歩けば、黄色い声が聞こえるし、一緒に学食でランチを食べていると、どこからか湧いてきた来た女子(とかいて虫と読む)達が、ワッと東雲を取り囲む。  誰とでも分け隔てなく明るく振る舞う喋り方。キラッキラの雰囲気。まるでアイドルのように輝かしい。  学内トップと言って良いほどの、モテ男だ。 「だから、僕、卓麻くんのこと好きなの」  そんな綺麗な瞳が、まっすぐに俺を見つめて。  頬をリンゴのように真っ赤にしながら、もう一度、そう言った。
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