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第3話
「とうきびを冷凍しとるけぇ、持って帰りゃええ。」と言って、おばあちゃんは冷凍のとうもろこしを4つも持ってきてくれた。そんなに食べられないからと、2つもらった。
「気をつけてなぁ、もう会うこともなかろうが、会えてよかった。世話になったなぁ。」と、私の手をきつく握りながら何度も言ってくれるので、涙がポロポロこぼれた。
おばあちゃんも、私の手を自分の額にあてて、「来てくれて嬉しい。ありがとう。ありがとう。」と言いながら泣いていた。
「一生の思い出じゃ。」という言葉に、95年も生きてきたおばあちゃんが、一生の思い出と言ってくれることが心から嬉しかった。
「見送るけぇ。」と言って、おばあちゃんは、私の車が見えなくなるまで手を振ってくれた。
私もおばあちゃんが見えなくなるまで、手を振った。
帰り道も、帰ってからも、涙が止まらなかった。
おばあちゃんにもらったとうもろこしは、甘くて懐かしい味がした。
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