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その日、彼女は悲しんでいた。
どうも太陽が消えてしまったのが、お気に召さなかったらしい。
闇に覆われていくセカイ。
まるで、真夜中。
彼女は悲しみ、泣く。
涙をこぼした彼女を見て、私は少しやり過ぎたかと反省する。
「真夜中は嫌かい?」
「いや。太陽がいい」
そういうと、彼女はつたないながらもきっちりとした目で私を見つめた。
なら仕方ない。
「そらっ」
私は彼女全体を覆っていた暗幕を取り外した。
途端に、顔を出す太陽。
いつもの光景だ。
「太陽!!」
彼女はそれを見て、元気に走り回る。
私は自分のことながら、なごやかな気持ちになった。
「どうやったの、パパ?」
やがて不思議そうな顔をして、こちらを見つめる娘に。
私は笑顔で応えた。
「真夜中を盗んだんだよ」
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