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「わかってるよ、お前の気持ちは。ただ……イヤでもそんな話が出てくるぞってこと。そしてお前の結婚話を聞くたびに……俺はいちいち凹むわけだ」
最初は晃司らしくニヤけていたのに――最後はちょっと本気で落ち込んでいるようだった。
大輔は少し驚いて、目をパチクリさせた。
「晃司さん、俺の結婚話で凹むんですか?」
大輔が結婚などするわけないと、恋人の晃司が誰よりわかっていると思ったのに。
「当たり前だろ。どんだけお前を信じてたって……不安にはなるよ。大輔だって、結婚や子供のことをまったく考えたことないわけじゃないだろ? 漠然とでも、そういう……普通の将来を考えたことはあるだろうし」
そう指摘され――大輔は改めて思い知る。晃司は思い違いをしている。
大輔は、結婚や子供を持つことを――考えたことはない。
「俺は……誰かと、家族以外と、こんな風に休みの日に家で夕飯食べてることさえ、考えたこと、なかったです」
大輔は過去のトラウマのせいで、長らく普通の人間関係を築けなかった。特に恋愛関係は、あえて避けてきたのだ。
だからその先の結婚や子供など、漠然とでも思い描くことはなかった。
そんな大輔だから、こうして好きな人と休日をゆっくり過ごせることに、至上の喜びを感じているのだ。
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