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反論する間もなく、全て男によって取り決められていく。悠李は慌てて口を開いた。
「迎えなんていいよっ、ここから遠いし。それに明後日は午後から面接があるんだよ」
「それは心配しなくても大丈夫だ。
明後日は俺も遅出でな。お前を連れてきてから会社に向かう。
その前に部屋に案内しときたいから、絶対に寝坊するなよ?」
「……分かった」
こちらの都合は聞いてくれそうもないと、仕方なく悠李が頷けば、男は満足げに表情を和らげた。
「宜しくな、河野。
俺は長谷川周平、41歳だ。
それじゃあさっさと帰って荷物を纏めておけ」
「……はぁい……」
「返事は短くハッキリと!」
「はい!」
悠李が長谷川の家から出るとすぐに鍵の掛けられる音がした。
『口の悪さと思うように休みが貰えないところにみんな閉口してしまってね。2ヶ月ももたないのよ』
─あれじゃあ誰だって辞めたくなるよ。
大きく息を吐き出し、とにかく、と気持ちを入れ換える。
─やるしかない!
悠李は胸の中にある蟠りを振り払うように顔をあげ、力強い目つきで歩き出した。
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