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俺はその夜、中学の頃を思い出していた。
華やかな青春時代を過ごして来た俺だが、2つ苦い思い出があった。
いわば初恋というやつだ。
顔も名前も覚えている。
村上裕子。
バスケ部のキャプテンで太陽のような女子だった。
髪はツヤツヤのロングで、いつもポニーテールにしていた。
整った顔立ちにすらっと伸びた足。
ユニフォームの上からでも分かる胸の膨らみ。
自分で言うのもなんだが、男子はサッカーの杉原、女子はバスケの村上という感じだった。
影ではお似合いのカップルとか言われていたのも知っていた。
俺は中学の卒業式で村上に告白した。
かなり自信があった。
まさか振られるなどと思ってもみなかった俺は、堂々とみんなの前で告白した。
村上の『部活と勉強に専念したいから今は彼氏とかはごめんなさい』という優しいフォローでなんとかプライドは守られた。
現に村上は進学校に進み、バスケでも県選抜に選ばれていた。
みんなも村上の言葉を信じていた。
しかし数年後、俺は衝撃の真実を知った。
坂下めぐみ。
のちの婚約者だ。
中学の頃、一番の問題児と言われた坂下めぐみ。
髪は金髪に染め、スカートはひこずるほど長かった。
いつも顔にはマスクをつけてバチバチに厚化粧。
まるで昭和のスケバン刑事だった。
その坂下めぐみが俺の事を好きだったようだ。
数年後、友達から聞いた情報によると、村上裕子は坂下めぐみから『付き合ったら許さん』と言われていたらしい。
『本当は好きだった』と村上は言っていたらしい。
全て『らしい』の話だから真実は分からないが、今回の同窓会で村上が来る事を期待していたのは事実だ。
そして同窓会当日。
俺は会場の居酒屋に到着した。
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