第1章

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駅前にある居酒屋は若者に人気の店だった。 多少、賑やかな店内が気になるが、なんと言ってもコストパフォーマンスが素晴らしい。 気軽に安くをモットーに《喜安》とトイレのステッカーに書いてあった。 席に着くと、そこは20人ほどが座れる大部屋になっていた。 おしぼりや箸などが並べられ、その数を数えると16人の予定だと理解した。 もうすぐ開始時刻の19時が来ようとしていた。 徐々に懐かしい顔ぶれが席を埋めていく。 そんな中、願いが叶うように村上裕子が姿を現した。 一瞬、そこだけが光り輝いたように見えた。 俺の向かいは2つ席が空いている。 『頼む、ここに座ってくれ。』 僕は心の中で叫んだ。 テレパシーなどのオカルトじみたものを全く信じない僕が、今日ばかりは違った。 それは僕の願いを感じ取るかのように村上裕子が振り向いたのだ。 『杉原くん?久しぶり~』 村上裕子はそう言って僕の向かいに腰を下ろした。 胸の中で強くガッツポーズをしたのを覚えている。 その数秒後『おっす!諒太くん』と懐かしい声がした。 『おー!ホケー!』 俺は声を大にした。 そこにいたのは同じサッカー部だった堀家(ホリケ)学だ。 苗字とサッカー部でずっと補欠だったこともあり、あだ名が(ホケ)になった。
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