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『久しぶりだな、ホケ!』
俺の声のトーンが1つ下がった。
それは明らかに目下の人間に対するものだった。
サッカー部でエースだった僕と万年補欠のホケにはそれだけの差があった。
役者が揃った。
初恋の相手、村上裕子。
俺の存在を際立たせる補欠のホケ。
俺は絶対的な成功が目の前に転がってきた事に胸を躍らせた。
同窓会が始まり、まずはホケのダメっぷりで笑いをとる事にした。
ホケがいかにダメなやつで、俺がいかに凄かったのかを熱弁した。
俺の話に村上は手を叩いて笑った。
時にはおしぼりで目元を拭う仕草をした。
俺は有頂天になった。
実る。俺の初恋が何年越しかに実ると確信した。
ホケにアイコンタクトを送り、僕をよいしょさせまくっていると、いつの間にか同窓会の終わりの時刻が近づいていた。
『この後、どうする?』
俺はグラスを口に運びながら冷静に言った。
まるで、まだ飲みたいなら付き合うよ的なスタンスだった。
『んー。堀家くんはどうする?』
村上は堀家に聞いた。
『任せるよ~。』
堀家は終始ニコニコだった。
『じゃあカラオケでも行く?』
俺は気だるそうに言った。
みんなが僕の意見に賛同して同窓会が終わろうとした時だった。
『もう終わりー??』
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