第1章

7/9
前へ
/51ページ
次へ
近くに全国チェーンのカラオケボックスがある。 3時間580円という格安サービスで人気だが、アルコール類が高いのがたまにキズだった。 俺たちは再度、お酒で乾杯をした。 一通り懐かしい話は終わったのに、坂下めぐみは気にせず昔話に花を咲かせる。 しかも、こともあろうか僕と村上の告白の話を持ち出した。 お酒が入っていたので、かろうじて動揺せずに済んだ。 村上は少し気まずそうに『お手洗い』と言って席を立った。 俺はここしかないと思い、電話が鳴る振りをして部屋を出た。 部屋からトイレまでは直線で20メートルほどだった。 その中間に非常階段がある。 俺は村上がトイレから出てくるのを見計らって声をかけた。 『村上さん。ちょっと良い?』 俺は村上の返事を待たずに非常階段の入り口を開けた。 付いてこなかったらという不安が頭をよぎったが、振り返ることなく非常階段に入った。 背後の気配に安堵した。 『話って?』 村上は目を丸くして聞いてきた。 お酒のせいか、少し頬が赤かった。 『さっきは坂下が変なこと言ってゴメン。』 『ううん。大丈夫だよ。』 俺は喉元まで『坂下に脅されたんでしょ』と言いかけてやめた。 『全部、いい思い出だよ。』 村上はニコッと微笑んだ。 『村上ー!』俺は気付いた時には村上を抱きしめていた。 『ちょ、杉原くん、、、酔ってる?』
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加