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あんな会社、あんなとこだと分かっていれば入るつもりはなかった。ほんとですよ。え、さっきと言ってることが違う。何言ってるんですか。違いませんよ。
それに、私はもうあの会社の人間じゃない。
ほら、これならいいじゃないですか。とっくに私は辞めてるんだ。あんな会社。
でもね、何ででしょうね。世間はそう思ってくれない。この前も面接落とされてしまいました。ほら、あの会社の人だと分かるとね。ははっ、週刊誌ではこんな風に書かれてましたよね。ときには、涙する老婆を罵倒していたと。えぇ、あなたの目と同じです。みんな、あなたの目と同じ目で私を見ますね。おかしいな。袋で顔を隠してもこれだ。
でもね、蒼ノ下さん。
その目、私もしてたんですよ。そう、カボチャ。あなたも私も同罪だ。ははっ、何言ってるんだこいつ、という顔ですね。
私も、です。そう、カボチャ。
こいつは人間じゃない。
と思っていたから、何でもできた。
かわいそうな老人を騙したり脅したりも平気で出来ました。ははっ、そんな顔しないでください。あなた、黙ってると怖いですよ。目が笑わないんだもん。
でもね、その目。私と同じ。
あなたも、私を同じ人間だと思っていない。
他の人も私をそう見ている。
かわいそうな老人を平気で騙したり脅したり、そんな人間を人間だと感じることができない。当たり前ですよね。私も、あなたの立場ならそう感じます。そんな外道、人間であるはずがない。
えぇ、そうです。その通りです。
……でもね、私も人間なんだ……なのに、どうしてこんなことになるんだ。
分かります?
もう今じゃ面接どころか外にだって出られない。どうして今日は私のアパートに呼んだか。
今私は、何でビニール袋なんか被ってるか。
いや、白い袋でも色がうっすらとのぞけるでしょ。
ははっ、あなたがここに来たとき、おもしろい表情してましたよ。最初は怖がっていたのに、あなたは私の話を聞くと私に怒りを覚えた。あなたはかわいい人だ。話に流されやすい。感情が移りやすいんですね。バカにしてませんよ。ただ、おめでたい人だなと感じました。
……蒼ノ下さん。
やめてくださいよ、大きな声で。
どうして、叫ぶんですか。
近所迷惑でしょ?
もう、怖いなぁ。私の方が驚いてしまう。
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