饐える土地(スエルトチ)

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 鼻の奥に刺すような饐えた臭い。  道を挟んでコンビニの向かいの土地からです。咽るのか最近、咳もよく出ます。  そこはもう更地になっています。と言っても綺麗に整地された、まっ平な土地ではなくて、形の悪い土の上に背の高い草が無造作に生えています。夏ですと、緑は涼も感じますが、ここの雑草は緑の色もくすんで茶色とか灰色に見えます。  広さは向かいのコンビニより少し狭い感じ。少し広めの庭付き一戸建てが収まるような広さでして、駅から徒歩ニ分、ゆっくり歩いても三分はかからないでしょう。都内の一等地なので、何も無ければ、なかなかの値が付くと思います。  この更地、今は国有地らしくて、看板に道路建設予定なんて書かれていて、四方を金網で囲まれています。ただ、この金網も緑色だった塗装が剥げて、足下にはボロボロと赤茶けた錆がこんもり。ところによれば、金網も崩れていて、くぐって入ろうと思えば入れなくもないでしょう。  この状態を見た人は、相当前から空き地だと思うのは当たり前なのですが、実は更地になって一年もたってないんです。  更地になる前は、ちょっとしたデザイナーズ風のアパートで、コンクリート打ちっぱなしの三階建て、六畳弱のバス、トイレ、ロフト、ミニキッチン付き管理費込みで七万五千円。一駅二駅先には大学がいくつかあるので学生さんの入居が多かったみたいです。
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