その昏い瞳が呼ぶもの

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男性が不安げに佇む浅葱の手をつかむ。 浅葱を守ってくれる大きな手。 大切な人。 大樹。 その人の手だ。 ここにいていいと、確かに教えてくれる、その力強さ。 手から伝わるぬくもりに安堵すると同時に引っ張られ、くらりと眩暈に襲われた。 「どうした?」 体を少し折り曲げ、その場にしゃがみこみそうになる浅葱を大樹が慌てて支えた。 「大丈夫か?」 「……ごめんなさい、気分、悪い……」 「わかった。休もう。歩けるか?」 なんとか頷いて、大樹の腕に支えられて歩き出す。 ホームを足早に流れていく人たちは視界に入った浅葱の様子を認めはしても、そのまま風景の一部かのように通り過ぎていく。 「駅の救護室いくか?」 頭を振った。 「少し、座ってれば大丈夫……」 血の気が下がり、動悸がする。 息苦しさに、浅い呼吸を繰り返した。 覚えのある不安がぶわりとぬるい風を孕んだように膨らんだ。 嫌な汗が、手の内や首元にじわりと浮かぶ。 理由は分かっていた。 さっき見かけた男子高校生の瞳のせい。 あれは、死を見つめる人の。 ーーあの瞳と同じそれの。
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