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「お前、千秋とヤったろ、こないだ」
「……だ、だからそれがどうかしたのかよ」
「美咲とはまだ付き合ってんだろ。悪い男だな」
「なっ……あれは千秋が誘ってき――」
「ちがーう、ちがーう。『美咲と別れようか考えてるんだけど、ちょっと千秋、相談乗ってくんねえか』ってお前が呼び出したんだ。で、ヤっちまった。そうだろう」
ウンコ座りのまま思いきりそっぽを向く俺少年。背筋が伸びて妙に姿勢がいい。
「しかも、このことは美咲はもちろん、ほかの誰にもいうなとか口止めまでしやがった、こいつは」
「それは……美咲にバレたらまずいからよ。まだ正式に別れてねえし」
「なーにが正式に、だ。お前はどのみち美咲と別れる。それにどうせヤラせちゃくれねえよ。明日にでも別れちまえ」
「そんなこと急にできっかよ……」
乙女風情な色恋しか知らないケツの青い俺少年。ウブい。ウブすぎる。ここにスマホかケータイがあれば『俺なう。三十数年前の二股バレそう。つーかバレたかもwww』と、写真付きでツイートしてるところだ。
「そういや昔にもあっただろう、似たようなことが」
「昔ってどれぐらい昔だよ」
「今よりもっとガキの頃さ。お前、松本とかいうツレと学校中の銭パクって逃げまわってたことあったよな」
「真奈美と聖香のこといってんのか」
「おお、それそれ。大正解。よく名前まで覚えてやがったな。こっちは苗字すら思いだせなかったわ。お前、どっちで男になったんだっけ?」
「それも忘れたのかよ」
「致した場所は覚えてんだけどな……と、まあそっちは置いといて話を戻すか、少年」
喉がニコチンを欲しがった。服の上からパッケージの出っぱりを探る――芳しくない結果。目的のブツはおそらく隠してきた上着のポケットだ。くそ。
「……Bまではヤラせてくれんのに肝心のあれは絶対だめなんだよな、美咲は」
B――いやあ、懐かしすぎて恥ずかしい。思わず乳首が痒くなった。でも嫌いじゃない響き。ああ、ツイートしてえ。ニコチン欲求も消し飛ぶホットなネタだ。
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