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「・・・・・・・・・。」
「べべべ別に怖くなんてないよ?!ただ、あの・・・ほらっ、暗いからさ!!家の中でも歩き辛いじゃん?!」
唯一の光源である俺の携帯を持っている雅の周囲はあまり暗くないハズだ。
それに・・・[歩き辛いのは俺の方]だと思うんだが?
「まぁ・・・別にいいけど。」
・・・[今が停電中で本当に良かった]。
[俺の赤くなってる顔を雅に見られずにすむ]から。
雅に頼られているというのは素直に嬉しいと思う。
だが・・・[何故、こうも男として意識してもらえない]んだろうか?
ハァッとため息を一つ吐いて、俺達はようやくリビングへと戻って来た。
・・・お袋達、早く帰って来ねぇかな。
~♪~♪~♪~
「「・・・・・・?!」」
突然鳴り出した携帯に二人してビビる。
噂をすればなんとやら・・・電話の相手は、今まさに俺が脳内で考えていたお袋からだった。
「・・・・・・もしもし?」
『あっ、風雅?今日は台風並みに酷い天気だけど、そっちは大丈夫かしら?』
「・・・まぁ、[家は絶賛停電中]だけど・・・[特に変わった事は何もねぇ]よ。」
[俺の心境以外は]な。
『あら、そうなの?お母さん達がいない間、風雅は雅ちゃんとは何も進展がなかっ・・・』
「それで?何か用でもあんのか?どうせ、今日帰って来んだろ?電話する意味あんのか?」
隣に雅がいるってのに何言ってんだ、この母親は?!
俺はお袋の言葉を遮るように早口で用件を促した。
『んもぅ、風雅ったら恥ずかしがり屋さんねぇ?ん~、なんて言ったらいいのかしら?えっとねぇ?そっちの天気が悪いって事は・・・[こっちも天気が悪い]って事なのよ。というか・・・[今日は全国的に天気が悪い]らしいわねぇ?』
「・・・らしいな。朝、テレビの天気予報で観た。」
[雅のガッツポーズがインパクト強過ぎて]、今日の天気が雨だって事しか頭に入らなかったけどな。
とりあえず、俺はお袋の話に合わせてみる事にした。
『台風が上陸してる訳でもないのに、こんな天気だなんて本当に困っちゃうわ。それでねぇ?天気の影響で・・・まぁ、予想はしてたんだけど、[電車が運行出来ない]そうなのよ。だから、[お母さん達が帰るのは明日になっちゃう]のよねぇ。』
「・・・・・・は?」
「風雅?紗綾さんとどんな話してんの?」
お袋が電話の向こうで何を言ってんのか、一瞬だけ理解が出来なかった。
雅は雅で、俺が携帯で電話をしているせいか・・・唯一の光源を失い、暗くなってしまったリビングで[俺にピッタリとくっついている]。
そのせい(主に雅のせい)で俺の思考はなかなか纏まらなかった。
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