それはある日突然に

2/4
85人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
「・・・なぁ、雅?実はな・・・父さん、再婚を考えてる人がいるんだ。」 ある晴れた日の朝。 なんの前触れもなく、お父さんが突然そんな事を言い出した。 「へぇ~、いいんじゃない?」 「・・・お前は、なんでそんなに冷静なんだ?」 ワカメと豆腐だけの至ってシンプルな(手抜き感が否めない)味噌汁を飲みながら、私は平然と答えた。 私の名前は(りゅう)(せん)()(みやび)。 今年の春、[無事に]希望した高校に入学したばかりの高校一年生の十五歳。 高校に入学して半月程経ち、新しい生活にもようやく慣れてきたところだ。 「お母さんが亡くなって七年経つでしょ?私、もう高校生だよ?お父さんもさ、そろそろ自分の幸せってもんを考えてもいいと思うの。」 「・・・・・・雅。」 「今日はお父さんが当番よね?それじゃ、私行くから。後片付けはよろしくね、お父さん。」 「あぁ、分かった。それとな、雅?・・・雅?」 それにしても、お父さんったら・・・朝の忙しい時間に何をいきなり爆弾発言してんの? なんか[まだ後ろで言ってたような気がする]けれど・・・まぁ、それは家に帰ってからでもいいよね? このままじゃ、学校に遅刻しちゃう!! 「・・・・・・・・・はよ。」 「おはよー、風雅。相変わらず低血圧だね。」 靴をはいて玄関から出ると、ちょうどタイミング良く[お隣さん]とバッタリ出くわした。 この低血圧気味のお隣さんの名前は(しば)()(ふう)()。 小学生の頃からの幼馴染で高校も一緒。 私とは違い、[余裕で]高校に受かった男である。 「・・・・・・乗ってく?」 「乗ってく。」 朝が苦手な風雅は、いつもこの時間は眠そうな顔をしている。 そんな風雅の自転車の後ろに跨がり、私は今日も元気に学校へと通う。 う~ん、良い天気だねぇ。 こんなに良い天気だと、今日はなんだか良い事がありそうな予感がする!! 「またお前らか!!自転車の二人乗りは禁止だと、いつも言ってるだろ!!」 「・・・ヤッバいねぇ。」 「・・・・・・このまま突っ切るぞ。」 校門前で生徒指導の先生に見つかり、無駄だと分かりつつも抵抗を示す。 颯爽と校門を通り抜ける私達を後ろから怒鳴りつける声が聞こえるけれど、そんなの無視無視。 学校を遅刻するよりはマシじゃない。 自転車を駐輪場に停めて、風雅と校内へ入る。 そして、私達は反省文を書かされた。 ・・・なんだか良い事がありそうな予感は、ものの見事に外れたみたい。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!