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「あっ、やっと停電直った感じ?」
「・・・・・・だな。」
なんと、部屋に着いてすぐに電気が復活した。
人類が発明した文明の利器のありがたみを心の底から噛み締めた瞬間だった。
「とりあえず、氷とか・・・必要な物取って来るから、大人しくしてろよ?」
「・・・・・・はぁ~い。」
私の返事に怪しげな表情をする風雅を見送り、自分のベッドへと横たわる。
おぉ・・・なんか、頭が凄いクラクラするんですけど。
えぇ~、なんで?
私、そんなに長い時間、お風呂に入っ・・・てましたよね、そういえば。
急に停電して真っ暗になるんだもんなぁ~。
今思えば・・・お風呂で体を温めるよりも、先に髪の毛や身体を手早く洗ってて正解だったのかもしれない。
それよりも・・・
「・・・[怖いものは、いつまで経っても怖い]よ。」
と、小さく呟いて寝返りを打つ。
[あんな事がなければ]、私だって・・・
ブンッ
「・・・・・・ヒッ?!」
[あの時の出来事]を思い返しそうになっていたら、視界が再び暗闇に包まれた。
停電が直ったと思ったら・・・それはほんの一時だったようだ。
完全に油断していた私はまたもや突然訪れた暗闇に怯え、体が無意識に震えだした。
「・・・・・・ハッ・・・ァッ?!」
・・・・・・あれ?
どうしよう・・・[息が上手く吸えない]。
「大丈夫か、雅っ?!」
すると、バタバタと階段を駆け上がる音がするなと思ったら、風雅が保冷剤や氷枕を持って、慌てた様子で私の部屋に駆け込んで来た。
「ハッ、ハァッ・・・ヒッ・・・ゥァッ?!」
「落ち着け、雅!!ゆっくりでいいから深呼吸しろ!!」
[私よりアンタの方が落ち着きなさいよ。]
風雅にそう言ってやりたいのに・・・今の私は[全くと言っていい程、言葉が出ない]。
・・・[呼吸するのって、こんなに難しかった]っけ?
「ハァッ・・・ハッ、ッ!!」
「雅、落ち着け!![俺がいる]だろ!!」
「・・・・・・?!」
私を落ち着かせようとしたのだろう。
風雅は咄嗟に[私の体をギュッと力強く抱き締めた]。
そして、幼子をあやすように・・・背中を優しくトントンと叩いてくれる。
あぁ、暖かいな・・・[風雅が側に居るとやっぱり落ち着く]。
「ハッ・・・ハァッ、ハァッ。」
「・・・だいぶ、落ち着いたみたいだな。」
暗闇に少し慣れた私の目に映ったのは、風雅のホッと安心したかのような[柔らかい微笑み]。
・・・・・・何、その笑顔?
私、風雅のそんな顔・・・見た事ないよ?
不意に見せた風雅のその表情に・・・不覚にも[ドキッとしてしまう自分がいた]。
くっそぅ・・・風雅のクセに。
そんな事を内心で思っていたけれど、風雅が来てくれて安心したらしい私は・・・そのまま、更なる暗闇に意識を手放した。
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