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〔門限、ありそうなのにね〕
やわらかさをともなう声にうっとりしながら、私は返事をする。
「それ、大学の友だちにもよく言われるけどないんですよ」
〔わたしはあるよ〕
「あるの?」
私が腰掛けた縁石の裏に彼女は回り込み、背中に少しだけ触れた。
〔たくさんある。
朝近所の人が掃除してるときと、小さなこどもが公園で遊ぶとき、あとはーー考えたくないね。恐いやつはやっぱりいるから〕
「今日は?」
〔今日は大丈夫。あなたに会えたし、1日の始まりとしては上々〕
「ふふ」
〔なによ〕
「撫でていいですか」
〔…あまったれはいや〕
そう言いながらも、彼女は私の足の間を2回潜ると、ぐっと首もとを伸ばしてくれた。
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