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「だれですか、けんかうってんですか」 断言するけど、酔っ払っていなければそんなせりふは絶対はかない。 けれど、届いた声が現実味がないくらい綺麗なのでよけいに腹立たしく、悪びれることもなくきょろきょろあたりを見回した。 塀の上を何かが横切り、驚いて身を竦める。ここは海が近いので、かもめやカラスの姿はしょっちゅうある。 でも、こんな真夜中に鳥が飛ぶだろうか。 そして、今の〔声〕は一体どこから聴こえたの? 人の気配はちっともない。 頭の中のアルコールが少しずつ蒸発して、なんだか不気味に思えてきた。
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