夏の日の思い出

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図書館の一角に、それはあった。 本棚に綺麗に並べられた新聞紙は、5年前までの分は閲覧室にあった。 だが、どこから探せばよいのだろう。 「何か、お探しですか?」 モノクルをかけた老紳士が僕の背後から声をかけてきた。 「ちょっと事件とか事故とかについて知りたくて」 「私でお役に立てるのであれば、何なりと」 「小さい男の子が亡くなったことって、ありますか? 場所は……海あたりで」 すると、その老紳士は目を見開いて、 「あなた、悪いことは言いません。今すぐ、家に帰って扉の鍵をかけなさい」 言われたことが分からず、その場から動けないでいると、その老紳士は僕の腕を引いて図書室から連れ出す。 「今日1日。今日だけ耐えれば、大丈夫です。今日を乗り越えたら、またここへ来なさい。すべてを、お教えします」 僕は言われるがまま、大急ぎで家へと戻る。
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