夏の日の思い出

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「ありがとうございます、開けてくれて」 だが、遅かった。 父さんの背後には、小さな男の子が立っていた。 「ユキ……」 「お兄ちゃん、どうして開けてくれなかったの? 僕、待ってたのに」 ユキはだんだんと近づいてくる。 「ねえ、お兄ちゃん、これから一緒にいてくれる?」 「それは無理だよ。僕だって東京に帰らないといけないから」 「トウキョウ? トウキョウって、何?」 「東京っていうのは、こことは違う都会で」 「僕も、行ってみたいな」 「ユキは、もっと大きくなってから」 僕は彼をなだめようとするが、彼は僕の腰に引っ付いたまま、動かない。 「ボクモ、イキタイナ」 彼の目が怪しく光ったのを見ると同時に、僕の意識は段々と遠のいていった――
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