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「へえ。昔、そんなことがあったんですか」
記事の取材の為、私はこの家を訪れていた。
東京郊外で周囲を緑に囲まれ、自然の中にポツンと一軒だけ建つ家。
この家では、男性が家族と共に暮らしているそうだ。
「はい、昔のことですがね」
そう言って、彼は冷たい麦茶で喉を潤した。
「それで、その少年の正体とかって……」
「さあ、知りません。ですが、後から聞いた話によると」
彼は言葉を切って、私をじっと見つめる。
「彼は気に入った人の心に入り込み、仲間になる。気が付いたら、家族になっているんです」
「家族に、ですか」
「ええ。冗談を言っているように聞こえるでしょうが、これは本当のことなのです。なぜなら」
丁度その時、居間の扉が開いて、高校生ぐらいの男子が顔を出した。
黒髪に黒い瞳。
目の前に座る男性と、そっくりだった。
「僕が体験したことなのですから――ね、ユキ?」
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