夏の日の思い出

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 * 「へえ。昔、そんなことがあったんですか」 記事の取材の為、私はこの家を訪れていた。 東京郊外で周囲を緑に囲まれ、自然の中にポツンと一軒だけ建つ家。 この家では、男性が家族と共に暮らしているそうだ。 「はい、昔のことですがね」 そう言って、彼は冷たい麦茶で喉を潤した。 「それで、その少年の正体とかって……」 「さあ、知りません。ですが、後から聞いた話によると」 彼は言葉を切って、私をじっと見つめる。 「彼は気に入った人の心に入り込み、仲間になる。気が付いたら、家族になっているんです」 「家族に、ですか」 「ええ。冗談を言っているように聞こえるでしょうが、これは本当のことなのです。なぜなら」 丁度その時、居間の扉が開いて、高校生ぐらいの男子が顔を出した。 黒髪に黒い瞳。 目の前に座る男性と、そっくりだった。 「僕が体験したことなのですから――ね、ユキ?」
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