夏の日の思い出

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男の子の名前はユキと言った。 冬に生まれ、その日がたまたま雪が降っていたからユキ。 だがユキは冬よりも夏の方が好きみたいだ。 僕とは、真反対だ。 麦わら帽子にタンクトップ、短パンのいかにも小学生です、という格好をしたユキは、僕の手を引いて町の中を駆けていく。 「遅いよ、お兄ちゃん。早く早く」 「ユキが早いだけだろ? 全く……」 僕はそう言いながらも、ユキの後を追う。 「まだ着かないの? 目的地」 「もう少しだってば……ほら、見えた!」 ユキが止まったのにつられて足を止めれば、そこは町が一面見渡せる高台だった。 「綺麗だ」 立ち並ぶ家の瓦には朝露が残って、それが朝日を受けてキラキラとまるで宝石のように輝く。 奥に見える緑は深く、東京の街に生える街路樹とは違い、のびのびと生きているみたいに感じる。 「どう、お兄ちゃん? 『とうきょう』と違う?」 「違う。風景が全然違うし、木もなんだか生き生きしてる」 「そうでしょ? これ、夏だからキレイなんだよ。他の季節だったら、光がここまで届かないんだよ」 そう言ってユキが指し示した方には、高くそびえたつ峰がいくつも連なっていた。 夏だからこその風景、か。 僕は口元に笑みを浮かべながら、元気に歩いていくユキの背中を追った。
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