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駄菓子屋に寄り、アイスを2つ買う。
「ありがとう、お兄ちゃん」
「これぐらいどうってことないさ」
ユキはもう一度ありがとうと言って地面に座り込み、アイスの袋を開けた。
小さい舌でせっせと溶けだしたアイスを舐めるユキを見ていると、なぜだか幼いころの僕を見ているみたいだった。
確かに僕と同じ黒髪に黒い瞳だが、この日本では珍しくない。
不思議に思って色々観察していると、彼の丸々とした目と僕の目がぶつかった。
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「夏も、案外いいものだと思ってな」
何も言わないのも怪しまれるだろう。
なぜか僕はそう思って、適当に頭に浮かんだこと、いや、本心を語った。
「お兄ちゃん、夏が嫌いなの?」
目を一層丸くして、驚いたように彼は僕の顔を見る。
「だって暑いし、蝉はうるさいし、太陽はまぶしい。1つもいい事なんてないじゃないか」
ユキは何も言わず、僕の顔をじっと見つめる。
アイスを食べ終わったユキは、ポケットにアイスの袋をねじ込んで、急に立ち上がる。
「じゃあ。いいこと、教えてあげる。こっちに来て」
半ば強引に俺の手を引くユキ。
溶けたアイスが手についたのだろうか、彼の手はベタベタしていたが、暖かかった。
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