夏の日の思い出

8/14
前へ
/14ページ
次へ
電子音が、僕の耳に入る。 いつの間にか枕元に置かれていた目覚まし時計は、午後4時を指していた。 「おはよう。よく眠れたみたいだねぇ」 近くのテーブルには、ばあちゃんが座っていた。 「……おはよう。ねえ、ばあちゃん」 僕は上体を起こし、ばあちゃんの向かいに座る。 ばあちゃんは穏やかな表情で、「何だい」と僕の言葉を促した。 「ばあちゃんは、『ユキ』っていう男の子、知ってる?」 それを聞いた途端、ばあちゃんは笑い出した。 「何言ってるんだい。自分自身がよく知ってるじゃないか。”ナオユキ”」 「そういえば僕、自分の事を『ユキ』って言ってた……」 ばあちゃんは、うんうんと何度も頷いている。 「そっか、夢を見たのか。僕は」 すると、ばあちゃんははて、と首を傾げた。 「何言ってるんだい、ナオユキ。お前、昼過ぎにふらっと帰ってきたじゃないか」 「え……?」 「朝方にふらっと出て行ったから心配したけど、ちゃんと帰ってきてくれてよかった」 僕はそのばあちゃんの言葉を背に、自転車へ跨ると外に飛び出した。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加