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電子音が、僕の耳に入る。
いつの間にか枕元に置かれていた目覚まし時計は、午後4時を指していた。
「おはよう。よく眠れたみたいだねぇ」
近くのテーブルには、ばあちゃんが座っていた。
「……おはよう。ねえ、ばあちゃん」
僕は上体を起こし、ばあちゃんの向かいに座る。
ばあちゃんは穏やかな表情で、「何だい」と僕の言葉を促した。
「ばあちゃんは、『ユキ』っていう男の子、知ってる?」
それを聞いた途端、ばあちゃんは笑い出した。
「何言ってるんだい。自分自身がよく知ってるじゃないか。”ナオユキ”」
「そういえば僕、自分の事を『ユキ』って言ってた……」
ばあちゃんは、うんうんと何度も頷いている。
「そっか、夢を見たのか。僕は」
すると、ばあちゃんははて、と首を傾げた。
「何言ってるんだい、ナオユキ。お前、昼過ぎにふらっと帰ってきたじゃないか」
「え……?」
「朝方にふらっと出て行ったから心配したけど、ちゃんと帰ってきてくれてよかった」
僕はそのばあちゃんの言葉を背に、自転車へ跨ると外に飛び出した。
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