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エリートの職場
田中一郎の職場はハッキリ言って一流企業だ。
ここには歳を重ねたということ以外取り柄のない脂ぎって汚らしい無能な年寄りもいない。
やれ女性の権利だ 自立だとヒステリックになり男女平等を掲げながらも男の全てを否定する厚化粧のババァもいない。
若く美しいが会社を生涯使う財布の見本市と勘違いしている頭と股の緩いアホ女もいない。
考える事すら忘れ、ただ指示を待つことしか出来ない猿以下のガキもいない。
上司は皆重ねた年齢に相応した落ち着きと経験 理路整然とした仕事をするプロばかり。
ここには男女差別はない。力仕事をする訳では無いのだ。パソコンを操作するのに男女の優劣はない。
ここで働く女性社員は皆「女」である事を盾にしない。しかしキチンと女性であるが故の不利を主張しそれがキチンと理解されている。
そしてこの職場 人もいいがシステムも田中一郎は愛していた。
適切な空調 高スペックの機材 完璧に組まれたスケジュール そして高い給料と約束された休日。
例え急病や事故で誰かが休んでも必ず誰かがカバーしてくれる。
パテーションに区切られ必要最低限の接触しかないが強固なチームとして働ける。
そんな愛すべきオフィスに入る田中一郎 出社時間のキッチリ10分前
「おはようございます」
誰の返答も無い こちらも誰に言ったつもりもない。
自らのデスクに座り唯一の相棒であるパソコンを叩き起し早速仕事にかかる。
矢継ぎ早に飛び込んでくる仕事を的確にこなし気が付けば昼食時
田中一郎はカバンから栄養を取ることしかできないパサついたクッキーと苦いだけが残された唯一のアイデンティティのコーヒーで済ませまた仕事に戻る。
パソコン上では熱い会議が進んでいたが定時の鐘がなれば即座に中断。皆がそれぞれのペースで帰り支度を進める。
田中一郎もその一人 必要以上の時間はかけない。就業時間内に全力を尽くすのが社会人だ。サービス残業など愚の骨頂。
「お疲れ様でした」
返事は無い こちらも誰に言ったつもりもない。
形骸化した挨拶を済ませ田中一郎は殺風景な部屋を目指し歩を帰路に進めた。
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