狛狐と神様

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黙って話を聞いていた稲荷大明神は、落ち着いた声を響かせた。 「……高淤加美神殿、御手数掛けました。 しかし二柱の和解は困難のようですね…… 皆には迷惑をかけますが、予定通り各自配置に付き被害が最小限になるよう尽力を注ぐようお願いします。 この地の人間を守りましょう」 「雪で緩んだ大地に暴風雨は甚大な被害をもたらします。 皆様のお力添え宜しく御願い致します」 地母神の言葉と共に山神らが頭を下げた。 祠から出ると激しい雨風が吹き付ける。 そこに八咫烏(やたからす)のクロがやって来た。 「お疲れ。神さんら仲裁に失敗やってな。鬼神の神さんらは短気でアカンな。すぐ闘う」 「ははっ。これ程の喧嘩は何年ぶりや?」 コンの問い掛けにハクとクロはフムと考えた 「雷神風神の二柱だけの喧嘩か…………あぁ400年ぐらい前の喧嘩が最後やなかったか?ククッ。アレは酷かったな」 「ん?……あぁ、アレな。人間が描いた絵のお陰で、あの神さんらおとなしくなったからな。クククッ」 「ったく笑うとこか?ハクとクロは失礼やな……」 喉を鳴らし意地悪く笑うハクとクロに、コンは呆れたように呟いた。 この三人が言っているのは、とある有名な屏風絵のこと。
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