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「ハク、調子はどうや?」
「ん~……ぼちぼちやな……」
あれから数日後
ハクは神社へとやって来たクロと社の屋根で、花見酒を酌み交わしていた。
遅れてやってきた春に、待ってましたとばかりに桜が咲きだした
「稲荷大明神が心配しとったぞ
ホンマに新たな狛狐を派遣せんでええの?」
「……あぁ…………ここは小さな神社やし、儂ひとりで大丈夫や」
フッと笑みを浮かべるハクだがそれは何処と無く寂しい笑顔だった
クロは眼下にある割れた狛狐の像を見詰めた。
「あん時は間に合わずスマンかった」
神妙な面持ちで頭を下げるクロに、ハクは口角を上げた
「なんや、しおらしい
似合わんから止めぃ。やっと春が来たのに雪降らすんか?」
「……それはアカンな」
クツクツと喉を鳴らすハクに、クロもフッと笑みを溢した。
ピクッ……耳をそば立てたハクは鳥居の方角に目を細めた。
「・・・そろそろ風も出てきたし、社の中に入るか……」
急に無表情になると、スッと社の中に移動した。
その理由に気付いたクロは、鳥居の方角に視線を向けてからハクに続く。
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