狛狐の穏やかな日々

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季節は春 鳥居を潜り神社へと続く石段の両脇には、桜の花が先を競うように咲き、ここを訪れる人々を出迎える 社の隣にある、大きく立派な枝下桜(しだれさくら)が、心地好い春風に揺れるお昼過ぎ。 この日も社の屋根にいたのはこの神社建築時、稲荷大明神から派遣された狛狐の『ハク』と『コン』だ。 花びらが舞う中、長い白銀の髪を(なび)かせ、立てた拳で頭を支えて寝そべっているのが『ハク』 ハクは白い狩衣に瑠璃色の袴姿、白銀の髪と同じ色の耳と尻尾。 鋭い目付きをした端正な顔立ちのハクは、気怠そうに鳥居の方角を眺めている。 その横で胡座を掻いてるのは『コン』 コンは淡い水浅葱色の狩衣と明るい瑠璃色の袴、髪は真っ直ぐな金髪で同じ色の耳と尻尾。 優しい目元の、優美な顔立ちのコンは後頭部で束ねた長い髪を春風に靡かせ、気持ち良さそうに眼下を眺めていた。
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