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一年後の春
「あらミヨちゃん、大ちゃん。こんにちは。大ちゃんお姉ちゃんと一緒でいいわね」
「こんにちは、田口のオバチャン。ほら大介、ご挨拶は?」
「こんにちわ」
「ふふっ。今日も寒いわねぇ、何時になったら春が来るのかしら。
……ふたりとも、雨が降る前にお家に帰るのよ」
隣を歩く弟の大介も大きくなり、ミヨの手をしっかりと握っている。
田中のオバチャンが言うとおり、最近晴れ間の日は無く雨が降ったり止んだりと天気が悪かった。
曇り空の中神社に行くと、社の周りで今日も子供達が遊んでいた。
「なんかまた雨が降りそう……」
「雲が厚いもんね」
「あれって雨雲だよねぇ」
社に上がる階段に腰掛けミヨ達は空を見上げていると、後ろから声が聞こえた。
「ミヨ、そのままお聞き」
ミヨはビクッと背筋を震わせ、こくりと頷いた
金狐の神様だ……
ミヨはドキドキしながら、全神経を後ろに向けた。
「えぇ子やね。……三、四日の内に嵐が来る。今日は早ぅお帰り。ここには暫く来んほうがええ」
コンはそれだけ伝えると、気配を消した。
しかし、ミヨは気付いていた。
だって何日か前、異形達の噂話を聞いたから。
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