たとえ二度と戻れなくても

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会いたい人に会える代わりに二度と現実世界には戻れないということ。 世の中そうそう上手い話はない。 私が最も会いたい人、それは今私が一番ハマっているアニメの男の子。 もし本当にその人に会えるというのなら、現実世界に戻れなくてもいい。 この教室の噂は今年に入ってから広まったので、今までは特に普通の教室だったみたい。 今年、大学に入学したばかりの私からしたら願ってもないチャンス。 大学には門らしきものはなく、階段を上がればすぐに大学に入れるくらい簡単な場所。 昼間は警備員さんがいるから、その大学に通う学生しか入れないけど、流石に夜になると警備員さんも居なくなるから、こうして、いとも簡単に侵入出来るというわけ。 幸い、友人にも恵まれ、毎日楽しい大学ライフを送っている。だが、それだけでは私の心は満足しない。 私の本当の幸せ、それは今から会えるかもしれない男の子に会うことだから。 一度きりしかない人生なんだから、私の好きに生きたってバチは当たらないはず....。 私が居なくなったら、友人や家族は当然のように心配をする。 今日のことだって、親には友人の家に泊まりに行くと言って嘘をついているのだから多少罪悪感はある。 だけど、それ以上に彼に会いたくてたまらない。 後のことはあとで考えればいい。 実際、噂であってまだ一度も会いたい人に会ったって話は聞いていないから嘘かもしれないし....って、現実世界に戻れないんだから話を聞いたことがなくて当然か。 「0時になった....」 私はゴクリと唾を飲んで、その扉を開けた....。
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