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人通りもまばらな夜のビル街を小走りでゆく、ビジネススーツの男の姿。
チラチラと時計を見ながら少しずつ歩速を早めていく。横断歩道を渡ったところで、終電に間に合うことが判明したのか、目尻を下げて安堵の表情を浮かべる。元来の人相か、その表情は堂に入っていた。
刹那、男はその急ぎ足をピタリと止めた。そして、その視線をビルの間に向け、威圧的な声を上げた。
「……出てこいよ、いるんだろ?」
男の声に釣られ、ビルの間から人影が現れた。
「……なぜわかった?」
落ち着いた口調で現れた男は、同じくビジネススーツのキツネ目の男。襟につけた金色の社員バッジが月の光を受けて輝く。
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