序章

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「くそぅ……」 「お客さん、乗るの?乗らないの?」  茶番を見せられたタクシーの運転手は、かったるそうに負け犬の社畜に声を掛ける。 「うるさい、今はそれどころじゃない!」  虫の居所が悪い雷進の社畜が声を荒げる。しかし、天下の雷進の社員バッジにつられて停めたタクシーの運転手も流石に今の言葉にはカチンと来たようだ。 「こちとら仕事でタクシー転がしてんだ、冷やかしは見逃せないぜ! ドライバー秘技『うるせぇ!とっとと乗れ!伊達に社畜ドライバーやってねぇぞ!』」  男を後部座席に詰め込められると、賃走に変わったタクシーは夜の高速をひた走る。  向かう先は、秩父の山奥。料金をガッツリ取る算段だ。
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