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「冬夜、僕は中三になったら、この学校の生徒会長になる。だから、冬夜は僕のサポートとして生徒会副会長になってほしい」
「風紀委員長の次は生徒会長か。会長になったら何かしたいことでもあるのか?」
「それは秘密。でも、なってくれる? 副会長に」
「ああ、お前が本当に会長になれたらな」
その時は軽い冗談で返事をした。
生徒会長になるには学年一位を中三まで維持しなければならない。いくら頭の良い紅蓮でも、ずっと一位は無理だろうと俺はどこかで思っていた。
だけど、俺と紅蓮が中三になった時、紅蓮は本当に学校の生徒会長になった。
でも、俺は生徒会副会長にはなれない。
何故なら、もうすぐ親父の仕事を手伝うため、今日フランスへ旅立つからだ。
紅蓮にはそのことを伝えていなかった。
空港に着き、フランスに行く飛行機が来るまで待っていると
「冬夜!」
「紅蓮、なんで此処に?」
「先生から聞いた。お父さんの仕事を手伝うためにフランスに三年間留学するって」
「ごめんな、紅蓮……生徒会副会長になれなくて」
「ううん、大丈夫。でも、生徒会副会長の席はずっと空けておくから」
「そんなことが出来るのか?」
「出来る。……だから、僕が高校三年になった時、高校の生徒会長になったら、その時は今度こそ生徒会副会長になってくれる?」
「ああ、そんなことがお前に出来るならいいぜ」
それから三年後、俺がフランスから帰国したとき、紅蓮は本当に高校の生徒会長になっていて、副会長の席を俺のために空けていた。
実をいうと俺は紅蓮のことがこの時、既に好きになっていたのだ。
だからこそ、フランスに留学して、紅蓮に対する恋心を忘れようと思っていた。
男同士ということもあり、結ばれるのは不可能だと思っていたからだ。
だが、そんな俺が忘れようと思っていた恋心も、紅蓮が俺の為に生徒会副会長の席をずっと空けていたことで、俺は紅蓮に対する恋心がさらに高まってしまった。
そして、今、その恋心が紅蓮によって、燃え上がったのだった。
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