2章

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本屋から少し歩くと、紅茶専門店があった。 (紅蓮が好きそうな店だな) 俺が紅蓮の数少ない情報で知っているのは、紅蓮の好きな飲み物が紅茶ということ。 今度の休みに紅蓮を誘おうと思い、下見も兼ねて、俺は店の中へと入った。 「いらっしゃいませー。お好きな席へどうぞ」 店員の元気な声で迎えられ、俺は席へと座った。 左右にしきりがあり、隣の客の顔は見えないようなつくりになっていた。 「ご注文がお決まりになりましたら、お声かけくださいね」 「わかりました。あの、じゃあ……この、アールグレイと本日のケーキセットで」 「かしこまりました、少々お待ちください」 「はぁ~……」 注文を済ませた俺は、普段慣れないことをした疲れから深いため息をついた。 俺がいつも行く店はファミレスや牛丼屋といった、学生でも男一人でも気軽に入れる店にばかりだ。 そのせいか、いかにもカップルや女同士で来るような、カフェには足を運ばない。 ここは一つ、どんな店か、しっかりと観察しないとな。 「おまたせしました。アールグレイと本日のケーキのシフォンケーキでございます。それでは、ごゆっくり」 「あ、ありがとうございます。……ん、ウマい」 フォークで一口サイズに切り、口に運ぶと、しっとりとした生地と甘い生クリームの感覚が口の中いっぱいに広がった。 ケーキを食べ終わり、紅茶を半分飲みきったくらいで俺は一旦、紅茶を飲むのをやめることにした。 思ったよりもケーキも紅茶も美味しくて、余韻に浸っていたが、本来の目的を忘れてはいけない。 俺はメニューをくいいるように見た。 紅茶の種類は、俺がさっき飲んだアールグレイ。それにアッサム、ハーブティー、アップルティー、シナモンティーなど豊富な種類が取り揃えてあった。 そういえば、アールグレイとシフォンケーキのセットは紅蓮と友達になったばかりの中学の頃にたまたま入った喫茶店で、紅蓮が頼んでいた気もする。 その頃から、紅蓮は紅茶が好きだったんだな……。 (紅蓮が喜んでる顔がはやく見たいな) そう思うと、また鼓動が早くなった気がした。 紅蓮のことを考えるだけで、いちいち鼓動が早くなっていたら、告白なんて、まだ先の話になりそうだなと自分にツッコんでいた。
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