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落ち着こうと残りの紅茶を飲んでいると、二人の客が入って来た。
一人は二十代後半くらいの男性で、もう一人の男性は制服を着ていたので、おそらく学生だ。
ふとあたりを見ると、満席に近いくらいの客で店は溢れていた。
その多くが、やはり紅茶を好む女性客が多く、俺のような男が来るのは、彼女に連れ添ってきた彼氏くらいなものだった。
だが、今さっき入って来た二人の客はどちらも男性客のように見えた。
「神崎君、少し遅くなって申し訳ないね。神崎君の言っていたこの店の場所がわからなくて……」
「いえ、大丈夫です。自分も今来たところですから」
(神崎君……?)
俺は自分のことを呼ばれているのかと思い、男性のほうを振り向こうとしたが、どうやら神崎君とは俺ではなく、男性の隣にいる学生のことのようだった。
それにしても、神崎紅にしろ、俺にしろ、神崎という名字は多いんだな……。
……ん? 神崎君って言ってたよな。
神崎紅も学生で、もしかして……いや、まさかな。
神崎君と呼ばれていた学生と二十代後半の男性は、俺の席のすぐ隣の席へと座った。
俺は神崎君と呼ばれていた学生が少し気になったので、二人の会話をこっそり聞くことにした。
それに二人のどちらの声も、一度は聞いたことがあるような声だった。
「神崎君。それで、小説の進み具合はどうかな? そういえば、今度は別のジャンルに挑戦してみたいと言っていたけど、どんなの? 普段はミステリーやファンタジーだから、次は路線を変えて、恋愛とか?」
「……はい、恋愛小説を書くつもりでいます。……僕の考えていることがわかるんですね」
「君とは中学からの付き合いだからね。それに中学から、学校のほうでも……生徒会のほうは、どう?」
「生徒会のほうは、いつもと変わりません。副会長以外は僕のことを怖がって、生徒会室以外で書類をしています」
「君は相変わらずだね、神崎君。生徒会長としても、作家としても優秀で、君は一体どこを目指しているんだい?」
「久遠先生。自分は優秀ではありません。自分より優秀な人を僕は知っています。その人を越えるため、自分は上を目指しているんです」
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