2章

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「ははは……そうだったね。君は、その人のことが好きなのかな? その人との今までのことを小説として書くつもりだったりするのかい? ……期待、しているよ。ペンネームにも、ちゃんと意味があるんだろう? じゃあ、ちゃんとその人に文章ではなく、言葉で伝えなきゃね。また小説が書けたらメールで知らせて。じゃあ、また学校でね……紅蓮君」 「……好きです、とても。小説の件、わかりました。それでは、また学校で」 「……」 二人の会話に、俺は一言も言葉を発することは出来なかった。 (神崎紅が……紅蓮……) こんなに当てはまる人が他に居なかった。神崎紅の公表されている情報には学生とだけ書かれていた。しかし、今の会話はどう考えても、神崎紅が紅蓮である他なかった。 二十代後半の久遠先生と呼ばれていた人は紛れもなく、俺や紅蓮が通っている高校の臨時講師だった。 普段はあまり学校に来ないから姿を見ることは少ないが、それでも俺たちのクラスを担当してる教師だ。 俺が顔を見間違えるはずがない。神崎紅のことを最後には紅蓮君と呼んでいた。 あの話し方や、声は……紅蓮しかいない。生徒会長で、副会長以外は自分のことを怖がって、違う部屋で作業をしている。 生徒から怖がられる生徒会長なんて、他の学校に居るはずがない。居たとしても、数少ないだろう。 今の会話を聞いて、紅蓮じゃないと考える方がありえない。 俺の憧れていた作家、神崎紅が、俺の親友で……いや、俺の好きな人、如月紅蓮だったなんて……。 それに、紅蓮には心を寄せている相手がいるということ。 夏休み最終日、俺は紅蓮の一番知ってはいけない秘密を知った……。
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