2章

8/14
前へ
/46ページ
次へ
夏休みが終わり、二学期が始まった。 クラスのみんなも元気そうで、一学期と何ら変わらない様子だった。 始業式ということもあり、学校は午前で終わり、俺はいつも通り、生徒会室へと向かった。 「よう、紅蓮。って、教室でもあったよな……」 「冬夜……お疲れ様」 紅蓮も普段通り、クールなままだった。 俺は夏休みの最後の日、紅蓮の秘密を知ってしまった。 本人に直接聞こうとも考えたが、紅蓮が今までに俺に話さなかったところを見ると、聞いてほしくないのだろうと思い、神崎紅が紅蓮だということを聞くことは出来なかった。 昨日の今日で、まだ心の整理がついてない俺に紅蓮は察したのか、 「今日は、教室でも話しかけてこなかったし、何かあったの? 冬夜、悩み事があるなら僕で良かったら聞く」 「悩んでることなんかねぇよ」 ……お前のことで悩んでるんだよ! と大声で目の前にいる鈍感な紅蓮に言いたかった。 普段なら、言葉に出さなくても俺の考えてることは大抵わかる。 しかし、自分のことに関することだと、何故か察しが悪い。 都合のいい頭というか、俺が紅蓮のことを考えていないとでも思っているのだろうか? こっちは、肝試し大会以来、お前のことが頭から離れないってのに……。 俺は紅蓮に初めての隠し事をしつつ、日々を過ごした。 朝から紅蓮の朝コールがあり、眠たそうな顔で、授業を受けては、生徒会室で紅蓮と二人、生徒会業務をする。 それが俺のいつもの日常。今まで通り、何もない。 唯一、変化したのは俺が紅蓮に対する想いが友情から恋愛へと変わったというだけ。 恋愛禁止の学校に居る以上、告白なんて出来ない。 ましてや、俺と紅蓮は男同士。 世間で同性愛が冷たい目線を送られていることくらい、ニュースを見ればすぐにわかる。 紅蓮に対する想いを本人に言わないまま、紅蓮と普段通り過ごして、気が付くと、十月中旬になっていた。 俺は何をしているんだろうか。このままでいいのか? その日は先生たちの会議があるとかで、授業は午後一時には終了した。 家に帰り、昼寝するのも悪くないが、久々に寄り道でもしようと考えた俺は本屋に向かった。 マンガを買った帰り、突然、雨が降ってきた。 「通り雨か? 傘持ってねえよ」 俺はふと目線にはいってきたシャッターの閉まった店の入り口で雨宿りすることにした。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

172人が本棚に入れています
本棚に追加