2章

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「好きな人の名前を教えてくれないか?」 俺は引き下がることなく、言葉を続けた。 「それは……言えない。ごめん、冬夜」 紅蓮は俺に謝ったあと、今まで目を合わせて話していたが、逸らしていた。 「いや、いいんだ。いくら親友でも言えないことくらいあるよな……」 紅蓮にそういったが、それは俺自身にも言えることだ。 俺は紅蓮のことが中学一年の頃から好き。今でもお前のことを考えるだけで、胸が熱くなる。紅蓮、お前に……触れたい。キスしたい。本当はそれ以上のことも……。 「……夜、冬夜……?」 「ぐれ、ん? なんで、こんなに近くにいるんだ?」 「冬夜がキスしようと顔を近づけてきた」 「……っ……」 紅蓮のことを考えていたら理性が一瞬飛んでいて、俺は紅蓮にキスしようとしていたらしい。 「悪い、今のはなんでもない。忘れてくれ」 「……うん」 俺はなにを期待していた? 紅蓮が俺にキスされそうになって本気の拒絶をしなかったことに、普段、自分のことを話さない紅蓮が俺に会長になりたかった理由を話してくれて、それはもしかしたら、俺に心を開いてくれたんじゃないか? 実は俺のことが少しは好きなんじゃないか? と考えてしまった俺がいた。 外国の暮らしが長く、日本に帰国してまだ半年しか経ってない今、俺のスキンシップがそれなりに激しいことも紅蓮は理解していた。 紅蓮以外の奴なら、友人にキスをされそうになったら、誰だって驚くし、嫌がるだろう。 ましてや同性からのキスなんて、いきなりされるとは思わない。俺は何を焦っているんだ? こんなことをしたって、紅蓮の気持ちが俺に向けられることはないというのに。 むしろ、親友だった好感度も一気に下落するだろう。 どこの誰だか知らないが、紅蓮に恋心を寄せられている奴がうらやましい。 きっと紅蓮と同じで優しくて、なんでも出来る奴なんだろうな……。 大和撫子のような女だったら、紅蓮も美形だし、お似合いじゃねえか。 紅蓮がソイツと上手くいって、結ばれたりしたら、俺の入る隙間なんてなくなる。
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