1章

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「おはようございます」 「あ、会長! おはようございます!」 「冬夜、おはよう」 「ああ、紅蓮か。……おはよう」 一時間目開始ギリギリに教室に入ってきたコイツは如月紅蓮 (きさらぎ ぐれん ) 。 星ヶ丘高校の生徒会長で、俺の中学一年からの友人。 今では親友と呼べるほどの仲だ。 言い忘れていたが、俺も生徒会に所属している。 ちなみに同級生でさえ、紅蓮のことを「会長」と呼んでいる。 それもこれも、何事にも表情を変えない、仏頂面が原因だと俺は思う。 黒髪で、身長は174センチと俺よりも八センチほど低い。 紅蓮に身長のことを言うと、「身長の話はしないでほしい」と言われるので、本人も気にしているのだろう。 だが、男の俺からしても、紅蓮はかなりの美形だと思う。 実際、女子からの人気は高く、本人である紅蓮には声はかけられないけど、紅蓮のことを好きな奴は数多くいる。 星ヶ丘高校の生徒会は成績が上位の者から、生徒会に所属する権利を与えられるシステムがある。 故に生徒会なんて面倒だと考えている俺でも、中学の頃から学年二位という優秀な成績を修めれば、自然と生徒会役員に入れるわけで……。 本当は辞退したいほど嫌な生徒会だが、生徒会長直々に俺を副会長に推薦したので、親友である紅蓮に恥をかかせるわけにも、頼みを断るわけにもいかず、俺は今年の四月から生徒会副会長として、紅蓮のサポートをしている。 そして、金持ちばかりが集う学校で、社長令嬢や御曹司が数多くいる。 俺も自慢するわけではないが、それなりに裕福な家庭だ。 むしろ金銭的に困っていて、特待生の生徒は、この学校だとほとんど見かけない。 因みに、生徒手帳の一番最初には大きく「恋愛禁止」の文字がある。 とはいえ、恋愛をする者が全く居ないわけがない。 高校生という年齢を考えれば、恋愛をしたい時期だ。金持ちが集う故に、ほとんどの者は高校に上がると同時に、親同士が決めた婚約者がいて、同年代と付き合う人は数少ない。 星ヶ丘高校の生徒は、一般受験をする者は少なく、AO入試や所謂コネ入学など、後はその高校付属の大学にストレートに行く者が多い。 その中でも県外の大学に行くのはよっぽど勉強したい奴らだけ。 だから、高校三年の七月上旬でも、お受験モードというものは一切なく、高校最後の夏を楽しんでいた。
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