1章

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まぁ、とはいえ、生徒会副会長になってからも眠い時は授業中にも構わず睡眠はとるし、生徒会の業務が大量にあるときなんかは生徒会室にあるソファーで仮眠をとっている。 そんな学校生活を過ごしているわけだが、やはり紅蓮には、どんな言い訳も許されなかった。 生徒会業務をサボるたびに反省文を出される。が、俺はその反省文も書いたことがなく、積もりに積もった俺の行いにより、そろそろ親友という立場も危ういのでは? と心の奥底で思っていたりもする。 紅蓮が、一時間目開始ギリギリに教室に入ってきたのには理由がある。 それは、昨日から始まった朝の挨拶運動。 挨拶運動の期間、生徒会役員は毎朝、校門前にて生徒に挨拶をしなければならない。 今日は、挨拶運動の二日目になる。忘れていたら言い訳も出来るが、俺の性格を知っている紅蓮は、俺が言い訳することも既にお見通し。 それをわかっているので、俺はこうして堂々と朝の挨拶運動をサボっている。 「冬夜、今日は何の日?」 「あー……今日か? 紅蓮、お前が聞いてくるってことは、お前の誕生日か?」 などと、最初はとぼけた言葉を吐く。 「……冬夜」 「うっ」 間を空けて、俺の名前を呼ぶのは、大抵本気で怒っているときで、言い訳をしないで本題に入れという合図だ。 こういう時、親友ってのは何でもわかるから、ある意味、厄介だ。 「今日は、たまたま腹が痛くてな……っていっても、どうせお前にはこういうの聞かねえってわかってるから、本当のこと言うことにするぜ。……悪いな、紅蓮。朝の挨拶運動が面倒だから、サボった」 「……じゃあ、これ」 「あ、ああ……」 スっと、紅蓮のスクール鞄の中から出されたソレは、まぎれもなく反省文だった。 ソレを俺の机に置くと、紅蓮は少し早足で自分の席に着席した。 これはいつもの会話だが、俺はこの関係も嫌いではない。 別に怒られるのが好きだから、わざと生徒会業務をサボっているというわけではない。 なんで急に自分の席に戻ったんだ? と考えていると、一時間目開始のチャイムが鳴ると同時に、教室に入ってくる担任が見えた。 相変わらず、「お前は真面目な奴だな」と紅蓮に言いそうになったが、その返答は「冬夜。それは真面目ではなく、当たり前のこと」などと予想出来たので、心の中で留めながら、俺は机の中から教科書とノートを取り出し、それを枕代わりにしながら、机に顔を伏せた。
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