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あっという間に午前の授業が終了し、昼休みになった。
俺は騒がしい教室よりも、静かな場所で食べたいと思い、生徒会室でパンを食べていた。
そして今朝、紅蓮に渡された反省文を眺めていた。因みに反省文は白紙である。
「反省文、これで何枚目だよ……」
と、ため息交じりに呟くと、
「反省文を溜めるほうが悪い」
そう言い放ったあと、紅蓮は俺の前のイスに座った。
弁当などを持っていないところを見ると、どうやら、教室か屋上とかで昼飯を済ませてきたようだ。
「紅蓮……い、いつから、そこにいたんだよ」
どうやら、俺の独り言は聞かれていたらしい。しかも、一番聞かれてはいけない奴に。
「冬夜が独り言を言った瞬間に来た」
「……」
なんてタイミングで来るんだよ。もう少し空気を読んで、生徒会室に来いよ……。
「冬夜、今、少しくらい空気を読んで生徒会室に来いって顔してた」
「あー……してねぇよ、そんな顔」
俺の心が読めるとか、紅蓮、お前は俺の何もかもを知りすぎなんだよ……。
「……」
「紅蓮、急に話さなくなって、どうしたんだ? ま、まさか……怒ってんのか?」
「違う……。これを読んでた」
「ああ、本か。紅蓮、相変わらず本が好きなんだな」
いつの間にあったのか、紅蓮は本を片手に、今読んでる心理学の本を見せてきた。
「本は、様々な知識を得ることが出来る素晴らしいもの。冬夜も、たまにはマンガだけじゃなくて、普通の本も読むべき」
「……善処はする」
本の話になると、紅蓮は人が変わったようにキラキラと目を輝かせている。
よっぽど、本が好きなんだな……と思った。
何故なら、正確には、わずかだが、本の話をしている時の紅蓮は表情があるからだ。
それに嬉しそうで、楽しそうでもある。
親友の俺だからこそ、紅蓮のわずかな表情の変化でさえ気付けるのだ。
「あ、マンガ以外なら、最近ハマってるものあるぜ。ラノベって知ってるか? あれは文章だけだが、ちゃんとストーリーもしっかりしてて、感動出来るつーか……神崎紅って知ってるか? その人の書くラノベ作品はかなり……」
「本の話はもういい。……今から、今日残りの生徒会の書類をする」
「ぐ、れん……? わかった、俺も今日は手伝う」
「ありがとう、冬夜」
「ああ……」
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